長い“トンネル”の出口が全く見通せない。少子高齢化や若者のクルマ離れ、消費の多様化、ガソリン高などによる「複合不況」に見舞われた国内新車販売は11月に過去最大の下落率を記録した。自動車業界は大手9社で計188万台の減産を余儀なくされており、生産・販売の不振が長期化すれば雇用の悪化や個人消費の落ち込みなどさまざまな副作用を招きそうだ。
◆ピーク時の4割程度
日本自動車販売協会連合会(自販連)が1日発表した11月の新車販売台数(軽自動車除く)は前年同月比27.3%減の21万5783台となり、11月としては統計を開始した1968年以来、過去最大の下げ幅を記録した。台数で見ても69年以来39年ぶりの低水準で、販売台数が前年実績を下回るのは4カ月連続。11月の下落率が20%を超えたのは三洋証券、北海道拓殖銀行、山一証券が相次いで破綻(はたん)した97年以来11年ぶり。バブル期だったピーク時(89年の51万台)のわずか4割程度しか新車が売れていないという記録的な落ち込みだ。
「10月以降、(新車販売店への)来店者が減り、商談も長引くケースが多い。全般的に消費マインドが冷えている」
日産自動車の志賀俊之COO(最高執行責任者)は、好転の兆しすら見えない新車販売に肩を落とす。
8月まではガソリン価格の高騰や景気減速の影響が大きかったが、「(9月の)リーマン・ショック以降の消費落ち込みが輪をかけた」(自販連の伏見剛理事)といい、対前年同月の下落幅は9月5.3%、10月13.1%、11月27.3%と月を追ってひどくなっている。
車種別では乗用車が27.9%減の18万6554台。このうち「3ナンバー車」と呼ばれる中・大型車が32.4%の大幅減となった。ガソリン高で燃費の悪いクルマが敬遠されたことに加え、株安で資産を目減りさせる「逆資産効果」が富裕層を直撃し、大型車や輸入車の売れ行きが急減している。
トヨタ自動車などメーカーは相次いで新型車を投入し、将来の下取り価格を新車販売価格から差し引く「残価設定型ローン」の導入など買いやすい仕組み作りを進めたが、大きな効果は見られない。メーカー内には「もう国内需要が増えることはない」(幹部)との悲観論が渦巻く。
◆環境対応に活路
その一方で、全国軽自動車協会連合会(全軽自協)が発表した11月の軽自動車の新車販売台数は0.7%減の15万3101台。2カ月ぶりに減少したものの、底堅さを見せた。全軽自協では「自動車を生活必需品として利用している地方の人たちの中には、登録車(軽以外の自動車)から乗り換えている人も多い」としている。
自販連は今年の新車販売台数について、当初は昨年と同水準の343万台と予想していたが、これを大幅に割り込み、34年前と同水準の320万台前後にとどまりそうだ。ピーク時(90年の597万台)から18年間で市場が半減する計算になる。
金融危機による景気悪化は“震源地”の米国をはじめとする先進国の自動車販売を直撃しただけでなく、メーカーの成長を牽引(けんいん)してきた中国やインドなど新興国にも波及し、世界的な自動車不況の様相を呈している。自動車メーカーが需要を喚起するには、ハイブリッド車や電気自動車などの環境対応車を、車両価格を抑えて投入するなど新たな“仕掛け”が急務になっている。
ラベル: 2008年自動車ニュース